造作家具づくり
カナリヤ石の研出しキッチン

カナリヤ石が映える明るく可愛らしく使いやすいキッチン
黄色いカナリヤ石を混ぜた白モルタルでつくるキッチン天板。ガスレンジ、シンク、作業台、さらに左手にはキッチンとつながったソファベースまで、幅5.2メートルがひとつながりになっています。大瀧建築の職人仲間である左官花嶋と一緒につくりました。

小さなカナリヤ石の粒模様が可愛らしく、すべすべに磨きあげた天板は、丈夫で熱にも水にも強く、タイルや木と調和します。一見真っ平らに見えますが、わずかな傾斜がついていて水が床に垂れづらくなっていたり、角は大きな丸みを持たせて優しい佇まいを見せてくれます。左官仕事ならではの仕上げです。デザインの着想は、かまど。家族の食事をまかなう場にふさわしいキッチンを、と考えました。

キッチンのフレームと抽斗は、ひかべ家具製作所に製作してもらいました。無垢材の取り扱いに長けた職人技を注ぎ、高い精度でつくりあげています。左官の技も木工の技も注いだ力作のオリジナルキッチンですが、大事にしたのは職人目線でなく、飽くまでもお母さん目線。使いやすさ、清潔さ、可愛らしさ、美しさ、丈夫さなどなど。見た目も機能性も愛されるキッチンをつくることを目指しました。
左官と家具の技術でつくる造作キッチン
研出しとは、「人造石塗り研出し仕上げ」のことで、天然石を砕いた種石を混ぜた白モルタルを固め、数回の研磨作業を行って仕上げます。昔は、学校の水飲み場や洋風建築の階段や手すりでよく見かけましたが、美しく丈夫で水にも強いものを手仕事でつくるのは高度な左官の技が要るし、白モルタルの粉がもうもうと舞う磨きは大変な工程です。加えて、木部の造作との組み合わせは、綿密な打ち合わせや設計のすり合わせが求められます。このように、技術と手間がかかるため、いまは新しい材料に取って代わられることが多くなりました。

既製品のキッチンは、よくできています。機能性は申し分ないし、天板もキャビネットの面材もいろいろなタイプから選べます。それでも、大工と職人で造り込む住まいには、すみずみまでオリジナルの設計デザインをほどこし、キッチンも一から設計し造作でつくりあげるものこそふさわしい、という思いを込めました。
愛される住まいのための愛されるキッチン
職人としての思いはあります。その思いは自分のためでなく、住む人の思いをかなえるためのものでありたいと考えます。大工の技も、左官の技も、家具の技も、住む人に愛される家のためにあります。

大工の家のこのキッチンは、初の試みです。使いながら、改良しなければならないこともあると思います。5年10年使ってみてわかることもきっとあります。大工と左官職人がつくったものなので、いつでも修繕、改善ができます。モデルハウスとしてご覧いただけるようになっていますので、ぜひ触れてみてください。