造作家具づくり
家具職人とつくった造付けの靴箱

置き家具の精度で造付け家具をつくる
玄関の靴箱を、天竜の山間部で家具工房を営んでいる「ひかべ家具製作所」の日下部さんと共に製作しました。

玄関は、大谷石を土間に敷き、壁は敷台の高さまでが大谷石で立ち上がり、 その上が塗り壁です。柱はあらわしで、敷台のふちと六角柱は釿(ちょうな)で仕上げています。石、土壁、木の素材感そのままで仕上げた空間です。 この空間性を生かすために、玄関収納のデザインに悩みました。いっそ何もないほうが潔いと思うほどですが、そいういうわけにはいきません。 そこで、これまでの大工仕事でつくる造作靴箱とちがったものにするた めに、家具職人の日下部さんに製作を相談しました。

日下部さんには、この桧製の靴箱のほか、キッチンの木部の製作もやっていただきましたが、無垢材の取り扱いに長けている職人さんです。加工技術も優れています。置き家具の精度をそなえる箱物が、空間と一体になった造付けの靴箱として玄関にそなわりました。2段重ねの桧のシューズケア用BOXも愛着がわいてくる仕上がりです。
家具を感じさせない美しいデザイン
できあがった靴箱をひと言であらわせば、端正です。空間と一体化しています。単に造り付けているということではなく、宙に箱が浮いているように設置しているのですが、家具としての箱を感じさせません。壁になじみながらも、空間に表情を持たせ、見事に調和しています。

通気を確保するために扉に設けた細いスリットが、玄関空間のアクセントになっています。何も置かないくらいが潔ぎ良いと思った空間性を生かしながら、木を使った造作で豊かさが加わりました。

もちろん、靴を脱ぎっぱなしに散らかしてしまえば潔さも台無しですが、 粗面の大谷石と木と土壁でつくった玄関は、かしこまった感じにしたかったわけではありません。子供たちにも自分にも、多少のお行儀のわるさは大目に見ようと思います。いざお客様を迎えるときは、履き物を靴箱に収めて玄関を気持ち良く整えます。