大工の自邸プロジェクト(9)

一文字瓦の屋根と草屋根



母屋と草屋根棟、二つの棟が並び壁の下地づくりがまもなく完了します。
そこからは、内外装ともに仕上げに入っていきます。


一足先に完成状態に近づいたのが屋根です。母屋の屋根は一文字瓦を使用。一文字瓦というのは、軒先の瓦の下端が一直線に仕上がる瓦です。すっきりとしたデザイン性が特徴です。通常の瓦は軒先が波打っていて、瓦と瓦の継ぎ目はマンジュウと呼ばれる丸い部分が継ぎ目を隠します。一文字瓦は、継ぎ目を隠すマンジュウがないことでもすっきりした仕上がりになるのですが、継ぎ目をぴったり合わせるのは瓦職人の腕と丁寧な仕事にかかっています。建築関係者ではないと思うのですが、通り掛りの年配の男性に、「一文字だね、マンジュウがなくていいねえ」と言っていただき、嬉しくなりました。


草屋根は、芝の根が育っている感触が足元から伝わってきます。どこかから飛んできたのか、鳥が運んできたのか、小さな草が芽を出し葉を広げていました。屋根の上で感じる小さな自然への愛しさがなんともいえません。








山あり山ありの仕上げに入ります



上棟してひと安心したのは束の間。造作でつくる「カナリヤ石の研ぎ出しキッチン」や、ユニットバスを使わずに在来工法でつくる「造作洗面・浴室」。草屋根棟の洗面には天然石のボウルを検討していたり、工程を追いかけながらデザインや仕様の詳細をこれから決める箇所もだいぶあります。自邸とはいえ、工程を遅らせることはできません。ほかの現場にも影響することになるし、春先には加盟している「股旅社中」の全国の工務店仲間に、この2 棟をお披露目するイベントが計画されていますから、完成の様子を想像してもらえるくらいまでは進めたいと思います。


というわけで、完成までまだまだ一山ふた山、山場の連続です。浜松の皆さんにこれから提案していく大瀧建築の新しいモデルとするために、褌を締めなおして気合いを入れ、突き進みます。デザインパートナーの中村さん、終盤に向けてよろしくお願いします。