大工の自邸プロジェクト(8)

母屋が上棟しました



前回の記事で紹介した草屋根棟の上棟につづいて、母屋も上棟しました。自邸ということもあり、新しいことへのチャレンジをあれこれ盛り込んでいるため、墨付けも刻みも張り詰めたものがありました。楽しみでもありますが、不安がないわけではない、というのも本音です。


上棟の日の朝はいつものように海岸まで出かけ、棟が無事に上がることと、その後の工事の安全を祈願しました。
果たして立ち上がった母屋の骨格は、予想通りです。模型でも図面でも何度もプランを練り直し、考え抜いてきたのですから、予想通りで当たり前ですが、この当たり前を目で見るまではワクワクと共に、もしやの不安も拭いきれないのです。


そんなわけで、予想通りに建ちあがった上棟の喜びはひとしおです。自邸に限らず、上棟の緊張感と棟が上がったときの喜びは何度経験しても慣れることがありません。





大工仕事の醍醐味



大瀧建築では、木材の接合部であるホゾとホゾ穴を大工自身が刻んで加工し、自ら組み上げます。接合部の加工を外部の工場に委託するプレカット材を使う家づくりは、現在の木造住宅の主流となっていますが、プレカット材の場合はあっという間に骨格が組み上がります。接合部に若干遊びがあり、柱や梁がスポスポと組めるからです。金具で緊結するのでそれで問題はないのですが、手刻みの場合は、普通の感覚でいえばきつめの寸法で仕上げます。それが、手刻みの適切なやり方なのですが、材と材を組むときには、カケヤという大きな木槌で打ち込んで組み上げます。住宅建築の骨格構造に金物が使われる以前の時代の家づくりでは、このぴったりの接合こそが構造の品質そのものだったのです。地震や大風に対し、揺れに耐え、力を吸収し、材が抜けない、住まいの丈夫さはこのぴったり加減にかかっていたのです。


大工が数人がかりで材を組み、カケヤで接合部を打ち込み、1 日がかりで棟をあげるのは、手刻みの家だからこその工程であり、大工仕事の醍醐味は棟上げにあるといって間違いないでしょう。
お餅まきをするのも、こうした棟上げを祝ってのことです。代々受け継がれてきた大工の技とともに、家づくりに関わる神事も大事にしていきたいと思います。