大工の自邸プロジェクト(4)


着工1 か月前、模型ができあがる


月1 回の定例ミーティング5 回目。大小さまざまな変更、改良を重ねて、配置と間取りプランは概ね決定。広報担当の大瀧彩央里が、今回の打ち合わせのために初めて模型をつくりました。2 階建ての住居と、その隣に離れのように建つ平屋の建物は草屋根の家。こちらは、お客様との打ち合わせスペースや畳スペース、ミニキッチンをそなえる建物です。草屋根を体験していただくこともできます。

打ち合わせの冒頭で、広報やコミュニケーションのデザインを手伝ってもらっているエーランチさんから、「着工を1 か月後に控えて順調に進んでいるようですが、プロジェクトはいま、どこまで進行してどんな状況なのですか?」と質問されました。思わず答えに詰まってしまったら、デザインパートナーの中村さんが、「ともて焦っている状況です」と、きっぱり言ってくれました。そう、まさにその通りなのです。

初めてのことを取り入れながら、新しいアイデアや発想が本当に有用なものなのか話し合ったり何度も考えて採用を精査し、そんなふうに検討してこれまで決まったことにはとても満足しているし、模型を見てもいい家になるはず、という自信はあります。
しかし、スケジュール表に向かうと、工程ごとに決めなければいけない
ことはまだ山積み。最良を目指す家のことを考えるのは楽しみなことで
もありますが、中村さんがいう通り、スケジュールはきつきつの状況です。






大瀧建築のアタマが新しくなった、かも


デザインパートナーの中村さんに感心することは多々ありますが、とくに感じるのは、ものごとを捉える目線が一貫していることです。住宅を取り巻く有形無形の環境の捉え方から、家具や小さなしつらえまで、一貫した見方で考えを貫いています。だから、デザインが力強い。

もう一つとくに感心するのは、素材と技術の理解を徹底して行うことです。大瀧建築が建てる家の技術と素材のことも、短時間で深く理解してくれました。そして、提案してくれる新しい材料、しつらえ、家具、道具、いずれについてもその成り立ちや特性を踏まえているので、ただ新しいだけものをとってつけるようなアイデアはひとつもありません。

そして、設計やデザインを考えるとき、立地環境や敷地の活用、建築プラン、間取り、内装、外装、建具、造作、家具──、家づくりのさまざまな局面について境目のない考え方をします。
家は家具だし、家具も家。家具のように階段を設計し、空間を道具に見立て、小さなパーツも建築のあり方として捉える。結果、微に入り細に入りいわゆるディテールが豊かになり、家全体の質が高まります。

中村さんとの共同ワークを通じて、大瀧建築がどう進化していくべきか道筋が明瞭になります。このプロジェクトの目的は大瀧建築の地力を底上げするためだということを再認識します。
そして、焦っている状況に違いありません。着工直前には、中村さんと集中合宿を行うことを決定しました。