大工の自邸プロジェクト(12)

草屋根棟、ほぼ完成
 
新型コロナウイルスの影響により、数か月遅れで工事は進んでいます。コロナ感染症対策を講じつつ、建材や備品の調達をやりくりし、そんな中でお客様の現場を優先させての結果です。が、デザインパートナーの中村圭吾さんとのやりとりはストップすることなく、粛々と着々と、スローペースながら完成に向かっています。
 
草屋根棟は、ほぼ8割方できあがりました。今回のワークショップには、股旅社中の工務店仲間である愛知県西尾市のイシハラスタイル石原真さん、神奈川県川崎市の丸晴工務店・濃沼広晴さんと松村浩司さん、股旅デザイン班のデザイナー・村澤一晃さんも参加してくれました。
 
みなさんに体験していただきたかった草屋根は、だいぶ緑が濃くなりコンデションは良好。中村さんがデザインし、股旅社中の仲間である岐阜県関市の鉄家具メーカー、杉山製作所に製作を依頼した黒鉄のはしごで草屋根に昇ってもらいました。
いかがでしょうか。軒の高さを抑えた平屋の屋根ですが、屋上とは違うなんともいえない気持ち良さを感じていただけたでしょうか。
 
内装は、これまでこの記事で取り上げてきたように、新しい取り組みを様々に行っています。脚部を床に埋め込んで固定したテーブル、オリジナルの障子の組子、クラフトアイアンの引手、天然石の洗面ボウル。時間と手間をかけてつくり出した新しいポイントが、参加者の目にとまったのは、声には出しませんが「よっしゃ!」と、なんとも嬉しいことです。
 
草屋根棟は、お客様との打ち合わせを行う場として建てていますが、しつらえは土間リビングの離れをイメージしています。こんな離れに興味を持っていただけるお客様と出会えることを楽しみにしています。
 
 
母屋は、あと一踏ん張り
 
草屋根棟を先行したため、母屋の完成まではあと一月以上。内装のプランはほぼ固まっていますからあとはつくるだけ。この日のワークショップでは、ウッドデッキっと塀のプランについて最終確認、のつもりでしたが、参加してくれた股旅メンバーの方々からの意見もいただいて、思いもよらず一から見直すことになりました。
 
思えば、この家のプランを最初に発表したときも股旅メンバーが参加してくれて、さまざまな意見を言っていただき、その後大きくプランを変更したことを思い出します。
今回はこんなに大きな変更をするとは思っていませんでしたが、皆さんの意見はどれももっともなことばかり。ここは喜んで大変更プランを考えます。大きなベニヤ板を持ち出して、実際に塀を立てた感じや室内からの眺めを確認しながら、ウッドデッキの平面形状、塀の高さと素材、外構プランを再考します。
 
昨年、先代である父親から大瀧建築の代表を受け継ぎました。先代、先々代からの技術と心を大切にしながら、新しいことにも積極的に取り組み、地元浜松に根付いた工務店として、地域の家づくりに取り組んでいきたいと、思いを新たに取り組んだ一棟目がこの家。私が受け継いだ大瀧建築のゆくえを占う試金石です。胸を張ってみなさんにご覧いただけるモデルハウスとなることを最後の最後まで考え抜いてつくります。