大工の自邸プロジェクト(10)

母屋の栗のテーブルとピスタチオデスク


母屋も草屋根棟も、いよいよ内部造作の段階に入りました。そして、家具計画も待ったなしの段階です。造作家具は内装工事で建物と一体で進みますが、置き家具は後回しにされがちです。予算を建物に使いすぎて、家具やカーテンはとりあえず間に合わせのものを置いてせっかくの新築なのに台無し、というのが巷でよく聞く話ですが、建築との一体感、つながり、空間性は、造作も置き家具も同じことです。家具も建築、建築も家具。


ということで、家具計画のあれこれが最終段階です。母屋のダイニングテーブルは、栗の無垢板の幅はぎ天板です。この脚部をデザインパートナーの中村圭吾さんにデザインしてもらいます。作業場に置いた原寸サイズの仮の天板を囲んで中村さんが披露したデザイン案は、まさに空間発想のテーブル脚でした。背景となるキッチンの木部やフローリングとの相性を考慮し、角材や棒材でなく板材で構成したテーブル脚のデザイン。見た目はオーソドックスなのに、見たことのない脚。オリジナルでつくる意味があり、嬉しいデザインです。


そして、この日もう一つ中村さんが提案してくれたのが、吹き抜けに面した2階の家族スペースに置くデスク。子供たちが小さいときは主に学習デスクとして使い、子供が巣立って一人暮らしを始めるときには持っていくこともできる。そんな発想のデザインです。天板はリノリウムという素材。化学製品のようにも見えますが、天然素材からできている建材です。カラーラインナップが豊富で、この家に住むことになる広報の大瀧彩央里こと私の家内は、明るく柔らかい緑色を選択。この色から、ピスタチオデスクと名前がつきました。今後、お客様の家にもプランに応じてこのピスタチオデスクを提案していきます(^ ^)




草屋根棟の固定テーブルと天然石の洗面ボウル


草屋根棟は、お客様と打ち合わせするためのものですが、住宅の離れのイメージでプランしています。土間リビングの離れです。
こちらのテーブルの天板は、耳付きのリユース天板。かつて立派な和室に置かれた一枚板の座卓が、和室が減少して使われる場を失いました。この座卓を解体してピカピカのウレタン塗装を削り剥がしてオイルで仕上げ直したというものです。
草屋根棟のテーブルは、脚をコンクリート土間に固定します。これも中村さんのデザインで、細い存在感のない脚にして天板の存在を引き立てます。固定式なので、実際の空間に運び入れて現場で設置場所、天板の角度、造作ベンチや壁との距離を念入りに確認します。そして、股旅社中の仲間である静岡市の園田椅子製作所に製作を依頼する造作ソファと、同じく股旅メンバーの鉄家具のメーカー、岐阜県関市の杉山製作所から仕入れる鉄フレームの椅子の張地を検討します。好きと思う気持ちを大切にしながら、空間との相性、木や鉄との対比、窓から射す光の加減を考慮しながら考えます。椅子の張地選びも建築の一部なのです。悩んだことは納得するまで考え抜きます。


また草屋根棟では、手洗いの洗面ボウルに既製品を使いたくないという思いから、天然石でオリジナル製作することを前回の記事に書きました。石材産地であるお隣の愛知県岡崎市の石材メーカーがパートナーになってくれます。この洗面ボウルの原寸模型をスチレンフォームを削って、削り粉にまみれながら、広報の大瀧彩央里がつくりました。広報担当の枠を超えて、現場にも出て、手を動かして何かをつくリ出す、そんなことも手がける広報担当。これからの仕事でもますます活躍してくれそうです。と、のろけているわけではございませんので誤解なきようお願いします。